現代の都市生活には、気づきにくい「欠落」があります。しかし、その反対のものに出会ったとき、初めてその存在に気づかされます。それは、やることや行く場所の不足ではありません。都市には十分すぎるほどの選択肢があります。本当に不足しているのは、「目的を持たずにいられる場所」です。消費者としてではなく、一人の地域住民として集まれる場所。何かを求められることなく、ただそこにいるだけでよい場所。
そんな空白を埋めているのが、屋外コミュニティサウナです。そして今、トロントでは、その価値を実感する人々が増えています。
なぜ今なのか
世界中の都市では、人々が自然に集まれる公共空間が少しずつ失われつつあります。公園はあります。しかし、真冬の夜に長く人を引き留めることはできません。コミュニティセンターもあります。しかし、それらは多くの場合、特定のプログラムや目的のために利用される場所です。今ますます希少になっているのは、人々をただ自然に結びつける空間です。
サウナは、もともとそうした場所でした。商品としてでも、施術としてでもなく、一つの「習慣」として。毎週の生活リズムの一部として。そこでは普段の肩書きや立場が薄れ、見知らぬ人同士が少しずつ顔見知りとなり、やがて地域の仲間になっていきます。冬の孤独感を和らげ、公共空間をより人間らしいものにしたいと考える都市にとって、屋外コミュニティサウナは単なる流行ではなく、待ち望まれていた存在なのかもしれません。
トレーラーと湖、そして広がったコミュニティ
Kotisauna の始まりに、綿密な事業計画はありませんでした。数年前の冬、小さな友人グループが薪で温める移動式サウナをトレーラーに載せ、トロントのビーチまで運んだのです。動機はシンプルで、温冷交代浴への興味と、真冬の1月に自然の中でアナログな体験をしてみたいという思いでした。
その後に起きたことは、予想を超えるものでした。良いものが広まるときのように、少しずつ口コミが広がり、自然とコミュニティが生まれ始めたのです。わずか2シーズンの間に、1,000人を超える人々が湖畔のサウナを訪れました。年齢も背景もさまざまです。これまで出会う機会のなかった地域の人々が、同じシンプルなサウナの習慣を共有するようになりました。
この試みは現在、「Kotisauna」として発展し、トロントのドン・バレーにあるEvergreen Brick Worksで運営されています。かつて採石場だったこの場所は、現在では環境保全とコミュニティ活動の拠点として生まれ変わっています。ビーチからBrick Worksへの移転は、単なる場所の変更ではありませんでした。それはより持続的な活動への一歩でした。屋外コミュニティサウナがカナダの都市にしっかりと根付き得ること、そしてその場所があれば人々は確実に集まることを示す実例となったのです。

世界で広がる新たな動き
この流れはトロントだけのものではありません。世界各地で、静かではありますが確かな動きが生まれています。それは、サウナを高級な贅沢体験ではなく、誰もが利用できるコミュニティインフラとして捉える考え方です。
ヘルシンキでは、Sompasaunaが2011年から完全なボランティア運営のオープンサウナとして活動しています。スタッフもおらず、予約システムもなく、利用料もありません。利用者は自ら薪を割り、その日に集まった人々と熱を分かち合います。そのシンプルさゆえに、今ではヘルシンキでも特に愛される交流の場となっています。
イギリスでは、Community Sauna Bathsがビクトリア時代の公衆浴場文化を現代に再解釈し、手頃な価格で利用できるサウナを地域社会へ取り戻そうとしています。またオスロでは、非営利団体のOslo Sauna Associationが、利益よりもコミュニティへの帰属意識を重視した運営を通じて、サウナ文化へのアクセスを広げています。
これらの取り組みに共通しているのは、デザインや運営方法ではありません。サウナを誰もが利用できる交流の場として捉え、商業性よりもコミュニティを重視していることです。そして、この考え方はサウナ文化の歴史がない都市にも広がりつつあります。人々が求めているのはサウナそのものではなく、サウナが生み出すつながりなのかもしれません。
なぜもっと増えないのか
これだけの需要があるなら、なぜもっと多くのコミュニティサウナが存在しないのでしょうか。
率直に言えば、これまで前例のない都市で屋外コミュニティサウナを実現するには、ほぼすべてをゼロから築く必要があるからです。自治体の許認可制度は、そもそもこのような施設を想定して作られていません。保険制度にも適切な分類が存在しないことが少なくありません。さらに、公衆サウナ文化が十分に根付いていない地域では、事業者はサウナを運営する前に「これは何か」「なぜ必要なのか」「なぜ公共空間に存在する価値があるのか」を説明する立場になることが多いのです。
これはトロントだけの問題ではありません。ロンドンでも、オスロでも、こうした活動を進める人々は皆、物理的な施設づくりと同じくらい、文化的・制度的な土台づくりに力を注いでいます。サウナを作ること自体は、実はそれほど難しくありません。本当に難しいのは、そのサウナが存在できる環境を築くことなのです。

それを支える“村”の存在
こうした取り組みは、一人では実現できません。Kotisaunaを可能にしたのは、多くのパートナーや職人たち、そしてこのような空間の価値を信じる人々の存在でした。
その中には、2025年にフィンランドで開催されたWorld Sauna Forumで出会ったパートナーも含まれています。World Sauna Forumは、世界各地で本物のサウナ文化を広める運営者、ビルダー、教育者、愛好家たちが集う国際的な交流の場です。
Kotisaunaの中心となるサウナ施設を設計・建設したのは、カナダのサウナメーカーKamu Saunaです。Becky Pelkonen(ベッキー・ペルコネン氏)と Juho Pelkonen(ユホ・ペルコネン氏)が率いる同社は、文化的な誠実さを大切にし、「本当に良いサウナとは何か」を深く理解しています。それは見た目だけではありません。サウナが中にいる人にどのような体験をもたらすかを重視しているのです。
そして、そのサウナの中心にはカナダの HomeCraft社の薪ストーブがあります。同社のストーブは、サウナ愛好家ならすぐに「本物」と感じる、包み込むような安定した熱を生み出します。つまり、本物のロウリュです。
これらのパートナーがカナダ企業であることにも大きな意味があります。World Sauna Forumのような国際的なネットワークを通じて共有された知識や技術が、カナダ国内で新たな形として実を結んでいることを示しているからです。そして、その一つひとつの協力関係が、この国における屋外コミュニティサウナ文化の土台を築いています。

誰もが参加できる習慣として
フィンランドのサウナ文化は2020年、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。評価されたのは建物や設備ではなく、「実践される文化」そのものでした。それは何千年もの間、気候や文化、環境の違いを超えて受け継がれてきた、人々が共に過ごすための方法です。
そして現在、トロントや世界各地の都市で生まれつつあるのは、その文化の新しい形です。根底にある価値は変わらず、現代の都市環境に合わせて新たな姿へと進化しています。規制の壁は少しずつ取り払われ、パートナーシップが築かれ、コミュニティが形成されています。
サウナの習慣そのものは古くから存在しています。しかし、その文化が根付くことのできる新しい場所は、今まさに世界中で開かれ始めているのです。
Sauna from Finland のメンバー企業である Kotisauna とのコラボレーションはこちらから!

担当者 Jason Wong
メールアドレス [email protected]
WEBサイト https://www.kotisauna.ca/