良いフィンランドサウナは、多くの要素が合わさって初めて完成します。ヒーターを含め、どれか一つの選択だけで成功が保証されることはありません。サウナを入浴者にとって心地よい空間にするためには、創造性に加え、利用者目線に立った幅広い視野が必要です。
高品質で本格的なフィンランドサウナは、綿密に設計され、丁寧に造られています。建築方法にはさまざまな選択肢があり、デザインに創意工夫を凝らすこともできますが、サウナを自ら建てる人も、施工を依頼する人も、基本的なサウナ技術を理解していなければ、よくある設計ミスを避けることはできません。
その結果として生まれるのが、心地よい蒸気(フィンランド語で「löyly(ロウリュ)」)を楽しめるサウナ、何度でも入りたくなるサウナです。ノンフィクション作家であり、サウナデザイナーでもあるLassi A. Liikkanen(ラッシ・A・リーッカネン)氏によれば、こうしたサウナこそが、入浴者の健康とウェルビーイングを最も効果的に高めてくれるといいます。
サウナデザイナーの机の上にあるもの:顧客のニーズと4つの要素
デザインは顧客のニーズから始まります。サウナの場合、まず何人が同時に利用するのかを明確にすることが重要です。適切なサイズのサウナは、快適であるだけでなく、省エネルギーで環境にもやさしいです。
リーッカネン氏によると、成功するサウナは「熱」「空気の質」「サウナ室の設計」に関する選択によって形づくられます。これらにサウナの用途に対する理解が加わることで、成功の条件が整います。巧みに設計されたサウナは、優れたサウナ体験の土台となります。一見シンプルで当たり前に見える結果の裏には、多くの熟慮があります。よく設計されたサウナは、長期的に見て持続可能な投資なのです。
良いサウナは、呼吸がしやすい
目に見えない要素こそが、サウナの機能において極めて重要です。リーッカネン氏によれば、空気の質の管理はサウナ設計の中で最も難しい部分だそうです。
空気は目に見えないため、つい軽視されがちです。しかし空気環境が適切でなければ、良いロウリュは得られず、数分とサウナに留まることができません。
と彼は指摘します。
換気には大きく分けて二つの方式があります: 機械換気と、重力を利用した自然換気です。機械換気については、研究に基づいた明確な推奨方法があります。新鮮な空気をヒーターの上部から取り入れ、循環した空気をベンチの下から排出する方式です。近年では、二酸化炭素濃度などに応じて換気量を調整する需要応答型換気や、熱回収の導入も検討すべきだとリーッカネン氏は述べています。
一方、自然換気では、同じ原則を正確に守ることが難しいです。そのため、実績のある方法を、サウナごとに個別に設計する必要があります。フィンランドのコテージサウナで使われる薪ストーブは換気を助ける役割を果たしますが、成功を運任せにしてはいけません。
すべての要素が正しく整ったとき、サウナ浴は真の喜びとなります。その喜びが、家庭用・公共用を問わずサウナの高い利用率を生み出し、サウナが優れた投資である理由を裏づけるのです。

Lassi A. Liikkanen ラッシ・A・リーッカネン
サウナデザイナー/著者
- フィンランドのサウナ設計・コンサルティングを、FinnishSaunaDesign.fi を通じて世界各地で提供。
- サウナ設計を支援する情報サイト Saunologia.fi を運営。
- サウナ建築家との協働により、世界各地でオーダーメイドのフィンランド式サウナを設計する Saunologia Oy の創設者。
- サウナ設計および技術に焦点を当てた著書を複数執筆しており、それらは多言語に翻訳されています。
- 著書『Hyvien löylyjen salaisuus(良いロウリュの秘密)』(Rakennustieto Oy、2019年)は、実践的なサウナ設計ガイドです。
- 英語版『The Secrets of Finnish Sauna Design』(Culicidae Architectural Press、2021年)は高く評価されている参考書で、日本語およびドイツ語にも翻訳されています。
- 最新刊『Finnish Sauna』(Maclehose Press、2025年)では、現代的なフィンランドサウナの構築方法を詳細に紹介しています。
本記事は、Sauna from Finland による
『Authentic Finnish Sauna Experience Quality Handbook』(2020年)からの抜粋です。
本書は Veico のオンラインストアにて購入可能です。
